いわさきちひろの絵本 - えらべる絵本のギフト（eギフト）

いわさきちひろの絵本

セットに付属する書評カード

東京の練馬区下石神井にあるちひろ美術館・東京

ちひろ美術館・東京の開館20周年を記念し開館した、安曇野ちひろ美術館

いのちの輝き、平和の大切さを語り続ける絵本

いわさきちひろ（1918～1974）という画家をご存知でしょうか。大正時代に生まれ、55歳で亡くなった彼女は、その生涯で、約40冊の絵本を描きました。ちひろは、自分が幼いときに目にした絵本を第二次世界大戦後に思い出し、一度はあきらめた道をすすむべく、再び絵を描きだしました。「私の心のなかには、幼い日見た絵本の絵がまだ生きつづけている。」と語っています。絵本をひとつの芸術表現と考えていたちひろは、このようなことばものこしています。「さざなみのような画風の流行に左右されず、何年も読みつづけられる絵本を、せつにかきたいと思う。もっとも個性的であることが、もっとも本当のものであるといわれるように、わたしは、すべて自分で考えたような絵本をつくりたいと思う。」
彼女が手がけた絵本のなかから、よりすぐりの絵本を選びました。

『もしもしおでんわ』
じりりーん、とモモちゃんにかかってきた電話。いったい、誰がかけているのでしょう。まっかなおひさま、そのつぎはアヒル。そして……。受話器をモモちゃんがとる度に段々と目を覚ましていくようすや、電話をかけてくる相手の不思議な姿は、なんともほほえましいです。作者・松谷みよ子のリズミカルなテキストと、ちひろの水彩と鉛筆線を生かした絵の組み合わせは、半世紀を超えても古びません。

『あかいふうせん』
主人公の少年パスカルは、ある日学校へ行く途中に赤い風船を見つけます。その風船と彼の間には友情が芽生えます。パスカルが声をかけると、まるで飼い犬のように、風船は後をついてくるのです。ふたりは、パリの街を歩きまわりますが、いたずらっこに出会い大ピンチ。アカデミー賞や、カンヌでも受賞した、同名の1956年制作の短編フランス映画が原作です。この映画をぜひ絵本にしたいというちひろの願いでつくられ、実際にパリを見てスケッチしたちひろならではのセンスが生かされています。

『ことりのくるひ』
表紙の女の子は目を丸くして、手を口もとにあてています。それもそのはず、飼いたい、と思っていた小鳥が頭の上にとまったからです。女の子の心の動きが、ちひろ自身による短いことばと、余白のたっぷりとられた場面の数々をとおして、伝わってきます。ボローニャ国際児童図書展のグラフィク賞を受賞した絵本です。

『戦火のなかの子どもたち』
いわさきちひろがベトナム戦争でおきていることと、自らの戦争体験を重ねて描いた絵本です。「戦火のなかの子どものかわいらしさを描こうと思って、かわいい子どもを描けば描くほど哀しくなるでしょう。（中略）ベトナム戦争のなかであれだけ子どもがさわやかに笑っているというのも不思議ですね。本当に自然のすばらしい生命力があるんですね。子どもは全部が未来だし......。」とちひろは語っていました。モノクロの画面のなかの、赤い色が目をひきます。

絵本のセレクト：ちひろ美術館
世界初の絵本美術館。絵本画家いわさきちひろの亡くなった3年後の1977年、彼女の住宅の跡地に開館。1997年には長野県松川村に安曇野ちひろ美術館が開館。年に数回展示をかえ、館内には展示室の他に、絵本の部屋や子どもの部屋、絵本カフェもあり、子どもからお年寄りまで楽しめる。

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